本免技能試験、ふたたび。
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早く手放したい仮免許証。 |
XX日目 本免技能試験2回目
ラスボスふたたび
某日、店長はまた府中の試験場にやってきました。前回も来た路上試験待合所です。集合時刻になって、また前回と同じように職員の人たちが待合所に入ってきました。どうやら試験官の顔ぶれは前回とほぼ同じ。前回店長が試験されたラスボス試験官もいます。
この日の受験者は16人。試験車が4台で、1台につき4人。それぞれ先発と後発で2人ずつに分かれます。これまでの試験と同じように、最初の受験票確認の時に自分の名前を呼んだ人が試験官になる……店長はなぜかそうなると予感していましたが見事に的中して今回もラスボス試験官に名前を呼ばれたのでした。
ラスボス試験官さんは今回もラスボスオーラ全開です。まるでお約束のように今回も書類手続きで手間取る受験生がいましたが、今回も「書類。全部。出してください」と氷点下対応。前回で書類不備を指摘されて大慌てした店長は今回何も言われませんでしたが、ラスボスは店長の出した書類を見て問題がないことを確認すると本当に何も言わずに書類を返してきました。まさにラスボスの風格。「自分の仕事はやります。余計なことはしません」という徹底した姿勢が伺えます。
今回の店長の走行順は2番手。仮免本免あわせてこれまでで一番早いです。そして2番手ということは先発組です。全員の書類確認が済んで、受験者達が職員さんからの試験の説明を聞いている時間に、ラスボスが店長の前に座る1番手の女性と店長に声をかけてきました。
「前回ももう試験の説明は聞いたと思うので、もしもう聞かなくても問題なければ試験に入りますが、どうしますか?」
仮免技能試験の時にも見た「初回受験でない受験者の試験開始繰り上げ」、本免試験でもあるようです。店長が直接聞かれるのはこれが初めて。
--この説明、前回は書類不備のせいで聞けなかったから今回初めて聞くんだけどな……
そうは思えど、ラスボスの言葉は額面こそ意思確認のテイですが「早く試験始めたいから説明聞かなくてもいいよね?」という真意が隠す気ゼロで伝わってきます。それに前走者さんも承知して席を立ってしまったので、ココで店長が「いやぁちゃんと説明聞きたいから聞いてからにします」なんて言った日にゃもはやそれだけで事実上の失格になりそうです。瞬時に悟った店長は、聞かれた直後におとなしく頷いて席を立ち、前走者さんと一緒に試験車に乗り込んだのでした。
前回の試験のあと
減点超過で路上試験から場内課題にも進めずに敗退し、さらに次回の試験がなんと40日後まで空いていないというダブルパンチに打ちのめされた店長。「予約合戦でつながるかどうかもわかんないしつながっても空いてるかどうかわかんない電話をかけ続けるのもツラいんだよぅ」とヌシ様にグチをこぼしていましたが、とんでもない幸運に恵まれました。試験の後日、ダメモトでかけた予約確認の電話がなんと1回目でつながり、さらに近日で空きが出ているというではありませんか。予約合戦、本当に読めないモンですね。かけてみるモンです。店長、迷わず試験日の変更を依頼して、1ヶ月以上先の試験を前倒しすることができたのでした。
「へぇ、それはよかったね。で、次の試験の前に埼玉の練習には行けるの?」
ごもっともな質問をするヌシ様。
「んー、今回は行かない。このまま次の試験を受けるよ」
「えー、どして?」
「たしかに練習できるならしたほうがいいけど……残ってるコマ数が2時間だけであと1回分なんだよね。だから、次の試験でもダメだった時のために、ココは温存しとこうと思ってさ」
「ふーん」
店長も、仮免1回目の時や2回目の時のように「その時点で改善しなければならない課題」が見えていれば、コマ数を温存せずに迷わず練習に行ったでしょう。しかしこの時は、その課題がはっきりと見えていなかった。前回の試験でやらかしてしまったコース取りのミスも速度オーバーも、気をつければ防げるものだと考えたのです。また同じことをしてしまうのであれば矯正しなければなりませんが、そうなってしまうかどうか、この時点でははっきりと確信が持てなかったのでした。それに、もし他の「課題」が見つかるならば、見つけてから練習に行ったほうが効率的です。いまの時点で練習に行って、また次も練習に行きたいとなればコマ数の追加料金がかかってしまうのですから。
--いま練習しに行ったからって合格の可能性が上がるとも思えないしね。
今回の前走者さん
そんなわけで、店長は前回の試験に落ちてから路上練習を一度もしないで2回目の技能試験に挑んだのでした。
前回同様に前走者と店長を後部座席に乗せて、ラスボス試験官が運転する試験車が試験場を出発し、ほどなくして路上で前走者さんに運転交代して試験が始まりました。
今回の前走者さんも女性です。運転席に乗り込むところから慎重さが伺えますが、発進準備の段階で緊張のせいなのか多少ぎこちないような印象もあります。7月に入ってから暑い日が続いていましたが、この日も朝から一段と暑く、試験が始まったお昼過ぎには相当の気温になっていたため、ラスボスが「先にエンジンかけてください」と言っていたのですが聞き漏らしてしまったようで熱心にミラーや座席の調整をしています。「エンジンかけて」と強めに言われて慌てて対応していました。ラスボスの言い方も相変わらずのものですが、この固さは後ろで見ている店長も少し不安に感じました。
そして店長のイヤな予感はまた見事に的中します。発進準備を済ませて発進し、最初の交差点でラスボスから左折の指示が出ましたが、いきなりウインカーなしでレーン変更してしまうミス。たまたま道が空いていたので危ない状況になったりはしませんでしたが、当然ながら減点です。本人もやってしまった直後に気づいたらしく、信号待ちしている時のハンドルを握る腕が震えてしまっています。
最初にミスってしまったことが響いているのか、そのあとも大きなミスはないもののどことなく固い運転です。そして路端停車の課題。ラスボスが指示を出して、無難そうなところに停車しましたが……
「……コレ、当たっちゃってますよ……」
ラスボスが淡々と指摘します。店長にははっきりとわかりませんでしたが、停車させる際に寄せすぎて、車体かミラーかタイヤか、ともあれ何かが何かに触れてしまっているようです。うーん、これは減点か、はたまた試験中止か……
「……発進してください」
慌てている前走者さんに、また淡々とラスボスが言い放ちます。どのような採点だったのかは定かではありませんでしたが、この停車のあとも、しばらく試験走行は続きました。前走者さんはもう開き直ってしまったのか、皮肉なことに停車の課題以降はそれまでの固さが取れてずっとスムーズに運転できるようになっていました。
「試験終了です。停車してください。運転交代します」
ラスボスに指示されて、試験車を停める前走者さん。ですが……
「また寄せすぎですよ。これじゃ左ドア開けられないです。運転交代できないでしょう」
最後の最後でまたもや叱責。クルマを動かすようにラスボスに言われて慌てる前走者さんですが、すぐに対応できず、ラスボスが操作を指示します。ここまでの採点がどうあれ、最後にこれだけ試験官から操作の指示を出されては「試験官補助」適用で不合格でしょう……お疲れ様でした……
店長、2回目の路上試験
意気消沈した前走者さんと運転を交代して、店長の試験開始です。
前回の試験、最初からサイドブレーキ外し忘れたり、コース取り甘くなったり標識探しすぎてスピード出しすぎたりと、緊張はすれども気の抜けたミスが多かった。要は集中力が欠けていたのです。
--とにかく、わかっていることでミスはしない。試験が終わるまで一瞬も気を抜かない!
発進準備を整えて、発進です。
スピードを出すところでは出す。けど出しすぎない。練習の時よりもメーターを細かくチラ見して速度を確認。進路変更時のウインカーと確認、寄せは仮免技能からやってきた通りに。
そして路端停車の指示が出ました。前回と同じように、特定教習で先生に教わったとおりに、とにかくスピード落としてゆっくりと……近くにバス停とかもないし、無難なところで適度に寄せて停車! よーしバッチリ……と思ったら……
「……ココ、人の家の目の前ですよ……交差点からも近いし……」
店長の気のせいなのか、それまでよりも一層冷たく、つぶやくようにラスボスが言います。
「す、すみません!!」
「……発進してください」
「は、はい!」
--うぅっ、試験の停車で人の家の前はダメだなんて知らなかった……交差点からもけっこう離れてたと思ったのに……減点か……? いや、いまは考えない。急ぐけど慌てずに再発進。気を取り直して元通り集中して運転する……
店長、とにかく気を抜かないようにと意識していただけあって、再発進後はなんとか元のペースを取り戻しました。
先にも書いたようにこの日も東京の最高気温は36度とかなりの暑さで、熱中症への厳重警戒が呼び掛けられていましたが、これは路上試験には有利に働きました。前走者さんの時もそうでしたが、ギラギラと日光が照りつける昼下がり、出歩いている人はあまり多くなかったのです。まったくいないわけではありませんでしたが、店長の試験で、歩行者のために徐行したりする場面はごくわずかで済みました。
試験も後半に入ったあたりで、多少空いている道で「出せるところではもっとスピードを出して」と注意を受けてしまいましたが、仮免技能の時と同じく、速度不足は1回だけなら減点されません。
--大丈夫、たまたま道が空いちゃってただけ……いままでの道はこんなに空いてなかった。だからこのあともこんなに空いてる道はそうそうない。制限速度を意識してれば、焦らなくて大丈夫……
店長の読み通り、次に入った道はさほど空いておらず、無理にスピードを出せるような状況にはなりませんでした。どのくらい走ったのかはっきりはわからないけれども停車課題からもうだいぶ走ったはず、試験終了まできっとあと少し……
そんな局面で進行方向に障害物。工事なのかなんなのか、目立つようにパイロンが道路の脇に立てられています。特に危ない状況もなく、店長はいままでやってきた通りに障害物回避。合図、確認、回避と難なく対応できましたが……
--元のコースに戻る……ウインカー出して確認……しまった、目視確認の首振りが甘かったか……!?
店長がそう思った瞬間に、ラスボスが力強くペンを走らせた音が聞こえたのでした。
--くそーっ、減点だ!! あともう少しで終わりだってのに!!
ラスボスから試験終了で停車するように指示が出たのは、それからすぐのことでした。
試験場に戻ると……
路上でラスボスと運転交代して、店長達を乗せた試験車が試験場の待合所前まで戻ってきました。
停まった試験車から降りて、ラスボスが無言で開けたトランクから二人は各々の荷物を取り出します。するとラスボスが「待っていてください」と一言つぶやきました。
--え、待てって、待合所の中で待てって意味……だよね? 僕ら二人ともに言ったんだよね?
店長は心配になりながらも聞き返すような気にはとてもなれず、とりあえず待合所に入ろうとしました。するとラスボスが、今度ははっきりと店長だけに向かって「クルマの中で待っていてください」と言います。店長はおずおずと荷物を抱えて、先ほどまで乗っていた試験車の後部座席に乗り込みました。
--これは一体どういうことだろう。前回は、前走者と一緒に待合所の中に入って、それぞれ順番に講評を受けたけど……
試験車のサイドミラーに、待合所の外で会話するラスボスと前走者さんの姿が映って見えます。何を話しているのかはまったく聞こえませんが、前走者さんはそれまでとは打って変わって身振り手振りを交えて表情豊かにしゃべっているように見えます。ラスボスの表情は見えませんでしたが、話している様子は、前回の店長にもそうだったように、それまでの冷淡さが多少和らいでいるように見えます。
--これは、あそこで講評をしているんだろうか……だとすると、順番に講評するから、たまたま待機場所がクルマの中だってことなのかな……何かの事情で待合所の中がいまは使えない、とか……? うーん……
状況がさっぱり飲み込めない店長。やがて、前走者さんとの会話を終えたラスボスがクルマの運転席に向かってきたのがミラー越しに見えました。運転席に乗り込んでくるラスボスを緊張しながらみつめていた店長に、ラスボスは前を向いたまま言います。
「これから場内の課題に入ります」
--……やった……!!
もろもろの減点はあったものの、今回はボーダーラインを切らずに路上試験を終えられたようです。場内試験に進んだのは店長だけで、前走者さんはやはり不合格だったのでしょう。彼女はクルマに戻されませんでした。
さあ、最後の課題は……
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